R.U. #3 家族



朝、目が覚めると2人分の毛布が折りたたまれた状態で被さっていた。そして隣に居るはずのロニーが居なかった。反対側を向くと誰も居ない。

目の前に置いてあった時計を確認すると時刻は既に6:41。起床予定時刻より20分遅れて目が覚めてしまった。先日の任務が応えているのか。

俺は重い背中を両手で持ち上げ、秘密基地中心部へと向かう。

予想通り俺が獏水している間に作戦会議は進められており、もう大体のことは決まっており、残っていた仕事は任務の確認のみ。

一通り作戦内容を詳しく聞いてる間に、ロニーの疲れた表情が見受けられるのが気になったが俺はロニーの様態を心配している場合ではない。今は

念入りに作戦内容を練ることが最優先だ。

今回の作戦は特別なものだ。そして何より俺にとって最も遣り甲斐のある任務でもある。

今日行う任務は、「レジスタンス・アンダーグラウンド」の名に相応しい。

俺たちを見捨てた親。そいつ等、基クズ共に俺等が身をもって制裁を下す。

大人という憎むべき人物。そして俺等がレジスタンス・アンダーグラウンドを結成せざる負えない気持ちにさせたのは彼ら「親」だ。我等レアは断固とし

て、親を許すことは出来ない。そう心に誓った。

俺は果たしてどれだけこの日を待ち望んでいたことか。

ボルテージを抑え、一旦メンバー全員を招集し、それぞれに装置を渡す。そして今回の任務を行う上で最も重要な役目を果たす偽装のロードサービ

スの番号が入ったポケットティッシュ。

全ての番号を確認し電話傍受装置を起動させ、作戦内容を再び確認する。

午前7:02。作戦を把握し各メンバーは実家に向かい、車に仕掛けを施す。

ボンネットの中には小さな発火装置、そしてサイドブレーキを固定させるためのある装置。

本来ならばウィラと同行し全員で任務を行う予定だったが、彼女の眠りが深すぎるお陰で任務は各メンバー別々に行うことになってしまった。しかし、

後日に引き伸ばすわけにも行かない。そう考えれば仕方が無いことだ。

俺とロニーは憎むべき親が住む実家へと足を伸ばす。中学校に通っていた頃は授業中によく家が視界に入り、しょっちゅう気分を悪くしていた。しかし

今はそんなこともお構いなし。リビングのすぐ傍から両親と俺等から見ると所謂「妹」が楽しそうに朝食を食べているのが目に入った。チャンスだ、やる

なら今しかない。即座にロニーに作戦内容を説明し、俺等は駐車場へと向かう。

俺等が担当する任務は2人で行う為内容的には非常に楽だ。エンジンルーム内に発火装置を入れるのはロニーの役目。そしてサイドブレーキを固定

させるのが俺の担当する任務だ。

ロニーの任務はまもなく終わり、サイドブレーキを固定させようと奮闘する俺を援護しようと車内に乗り込んできた。

ウィラから教わった方法が正しければ、このままサイドブレーキを力強く引くとカバーごとごっそり剥がれるのでそこに装置を組み込めば任務は完了。

早速後部席助手側に座るのロニーと力を合わせ、一気に力を加える。思うよりも硬いサイドブレーキ。何回かグッと力を入れて引き抜こうとするも後も

う少しというところで中々剥がれない。

そしてそのまま奮闘すること2分やっとの思いでサイドブレーキはロニーの顔面目掛け剥がれた。幸いなことに自分の拳がクッション代わりになり、彼

に負傷は無かった。

休む暇も無く俺はサイドブレーキを引き抜いたあとの空間に手を伸ばし、例の装置を設置する。そしてサイドブレーキを引いた時に鳴る「グガガガガガッ

」という音が鳴らないことを確認し、車の外へ出る。密封された車内の空気は非常に不味く、いつも味わっているはずの空気が異様に気持ちよく感じた

一足先に任務を終えた俺とロニーは、秘密基地で待機していたウィラにきつくお灸を沿え、俺とロニー、そしてラドを乗せウィラの運転で他のメンバー

の援護へと向かう。

まず最初に着いたのはセレンの実家。比較的大きな家で、門には大きく「Axe」と書かれている。

その門のすぐ傍で、セレンは作業に没頭していた。どうも力仕事は苦手らしい。

発火装置は既に設置が完了しており、ポケットティッシュもポストに入れてある。後はこのサイドブレーキを固定させるだけ。

力仕事と来ればこの4人の中で一番頼りになるのは俺だろう。即座にセレンと代わり、サイドブレーキの固定装置の設置を始める。

・・・が、思った以上にこの車のサイドブレーキは硬い。

「渋い車乗ってるわね・・・セレン、あんたの親が乗ってるこの車は所謂マッスルカー。'60~'80年代の海外では若者の憧れってとこね。馬力は少なくて

も400はあるし、最大トルクもヘビー級。回転数は低くてもパワーがあればなんとも無いしね。重量も想像を遥かに凌ぐ1.6t。にしてもこんなにガッチリ

した作りになってるとはね。」

前世は車であるウィラによると、力が足りないのではなくサイドブレーキが硬すぎるとの事。普通の車であれば力を入れればすぐに割れるはずなのだ

が・・・と、ウィラが車に乗り込み、援護を始めた。

「セレンも手伝って。」

この場に及んで珍しくロニーが進んで協力する。しかし3人の力でも全く折れる気配を見せない。ここで道草を食うわけには行かない。しかし、急ごうと

する気持ちが返って力を遮ってしまっているのか、思うようには行かず、状況は更に怪しくなる。

俺等が奮闘している間、セレンは静かに見守っていた。

その間もロニーは必死にセレンに応援を求める。

「セレン、時間が無いんだ!」

声を最小限に抑えセレンに呼びかけるロニー。そしてそれに応じるかのように耳を傾け、やっとセレンが援護の手を差し伸べる。もうこれ以上無駄な時

間を使うわけにはいかない。

「いくぞ!!」

それぞれがサイドブレーキに両手を伸ばし、力をこめて俺の合図を待つ待つ。

「いっせーのーせっ!!」

俺の掛け声を合図に一気にサイドブレーキに力を加える。顔を引きつらせ、耳をピンッと立たせ尻尾は直列しながら必死に力をこめる。

そのまま引き続けること20秒。一瞬フッと何かを感じ、次の瞬間俺等4人は後ろに倒れていた。慌ててその場を見渡しても外に異変は無く、ふと思い出

して左手を見ると折れたサイドブレーキを握っていた。やっとだ。

俺はメンバーに伝えるように左手にサイドブレーキを持ち全員に見える場所に持ち上げる。しかし結構な重さだ。中身は想像も出来ないな。

早速ウィラに内部を開いてもらい、中にあるサイドブレーキの装置を切り、即座にアルンアロファZで固定し、その場から逃げるように去る。

アクセ家で立ち往生している間に、殆どのメンバーは秘密基地に戻って待機していた。任務遂行中の人物は2人。

中央通付近住在中のロジ家、隣町大通南付近の住宅に住むクリプトン家。

まぁなんとなくこの2人だろうということは予想出来ていた。責める訳じゃないが、予想通りと言ったところか。

ともかく、一刻を争う自体だけは逃れなければならない。今いるアクセ家から近いクリプトン家に向かって車を出す。

念の為、現場に向かって走っている間にネロと連絡を取る。

呼び出し音が鳴ってから1秒も経たずにネロは電話に出た。

どうやら丁度俺等に援護を頼もうとしていたところらしい。目印となる車の車種と色を聞き、車のエンジンを始動させる。

セレンの家から12キロほど離れた先に現れた大きな公営住宅、別名マンション。そこに設けられている大きな駐車場にはざっと見たところ100台近くの

車が停められている。

しかしウィラが居れば迷うことなく目的の車を探し出すことなんざ朝飯前だ。目的の車は紫のワンボックスで、ホイールは5本メッシュ。この情報を元に

、ウィラの仕事が始まる。

俺等3人はその場でウィラが目的の車を見つけ出すまで待機しよう、と話し合っていた。が、無駄だったようだ。既にウィラが目的の車を見つけ出した。

ウィラがネロを俺等の元へ送り出し、案内させる。

「ごめん、こっちだよ。」

ネロの言うとおりについていった先は予想以上に派手な車があった。フロントのバンパーは地面擦れ擦れ、サイドスカートは空気を吸い込むかのよう

なフォルム、後ろに大きく突き出たリアバンパー。ネロの親は相当な車好きなようだ。

とりあえずウィラには発火装置を任せ、俺等4人はサイドブレーキ固定装置を装着させる。

それにしても相変わらず硬いサイドブレーキだ。この車だから尚更か。なんて一人でどうでもいい事を考えながら、ひたすらサイドブレーキに力をこめ

る。

「よーしその意気だ、頑張れー。」

相変わらず陽気というかマイペースというか、周りの状況の飲み込めなさはメンバーも一目置くほど。

ともかく今は腕をもぎ取るくらいの気持ちで頑張るしかない。「いっせーのーせっ!」で一気に力を込め引き抜こうとしたその瞬間・・・。

「ちょいとお兄さん、耳かしな。」

そろそろ腹を立てたくなってくる彼女の存在。ともかく脳にたまるボルテージを抑え、彼女の話を聞くと、俺は思わず我を失う。

「車のサイドブレーキってのはね、そんなことしなくても取れるんだよ。ちょいとどけて見ててみ。」

そう言って彼女は運転席に乗り込み、残りの3人にサイドブレーキから手を離させてポケットからある工具を取り出した。そして彼女はその小さな工具

を手に構え、何やら作業を始めた。

そして約20秒後、あっさりとサイドブレーキが外れてしまった。その場に居た俺含め4人は開いた口が塞がらなくなってしまい、呆然としていた。

彼女は俺が持っていた装置を取り、すんなりと装置を埋め込み、サイドブレーキが機能しなくなったことを確認して車を降りる。

俺等もその場から逃げるようにして去り、トランクの中へ入る。全員乗ったことを確認し、ウィラは静かにトランクの鍵を閉め、アクセルを吹かす。

車は一旦秘密基地に向かい、その間に俺はトランに連絡する。

「トラン、そっちの方はどうだ?まだ時間がかかりそうなら今からそっちに向かって援護するが。」

「大丈夫、こっちはもう終わったよ。僕も今から秘密基地に向かうから。」

「了解。・・・あ、ちょっと待ってろ。」

俺は一旦電話をロニーに渡し、ウィラの元へ動く。

「トランの方はもう終わったみたいなんだが、ここからトランのところまでどのくらい掛かるかわかるか?」

「そう遠くない。今通ってる道はトランの家から秘密基地までの通り道だと思うから。」

「よし、今からトランを迎えに行くぞ。なるべくスピードを落としてくれ。」

俺は再び電話を受け取り、トランの居る場所から近くにある目印になりそうな場所を指定し、その場所で待機するように伝える。

ウィラにそう伝えると、彼女は言葉を発さずアクセルを急に踏み込み、猛スピードで現場へ向かう。

「兄さん、今日の作戦まだ聞いてないんだけど。」

ロニーが俺の肩を叩き今日の作戦内容を聞いてくる。そういえばまだ彼には作戦内容を話していなかった。

「いいかロニー、今回の任務は全員で行うんだ。場所は秘密基地。更に今日の任務は一人でも逃せばその時点で作戦は全て棒に振ったも同然だ。」

「確かに、そんな重要な任務なら個人個人でやるわけにはいかないね。」

「そうだ。場所も一つに絞った方がより確実。そして作戦内容だが・・・。」

「・・・。」

ゴクリと唾を飲む音が此方まで聞こえてくる。

「俺等を捨てた親、そして奴等にとって俺等の生まれ変わりである妹、弟を全員殺す。」

「・・・・・・とうとうその時が来たんだね。」

「あぁ・・・。」

やはりロニーには少々辛い任務かもしれないが、これまでの作戦に参加してきた以上、参加しないか否かを聞くまでも無い。この時点では既にレアメ

ンバー全員参加が決定している。

「・・・これは運命?それとも復讐?」

「後者だ。」

素早い俺の回答に、ロニーは重い溜め息を吐く。見るからに脱力仕切ったような彼の姿程悲しくさせ、辛い気持ちにさせるものは無い。

「ロニー、私たちが今こんなことをしてるのは自分の為じゃないの。人間は間違ったことに対して反省しなくちゃならないの。もし親が自分で罪を乞うと

しないなら、私達の手で彼等を裁く。だからね、これは恨みを晴らすためだけじゃなくて、親に反省させる為なの。」

ネロは心の底から落ち込みきったロニーを抱き寄せ、背中を撫でて優しく説得する。

「親が反省するためには命を捨てなくちゃならないの?」

「それは必ずしもそうじゃない。ただ、それだけ大きな罪を犯した。それだけのこと。」

「それだけ・・・?」

ロニーは声を震わせ、抱き寄せていたネロの顔をゆっくりと見上げる。

「なんで、親自身で反省させようとしないの?母さんや父さんだって僕達を捨てるとき、少しくらい悲しみを感じてるはずだよ。」

「・・・ロニーは・・・悔しくないの?」

「え・・・」「私だってこんなことしたくない!命を恵んでくれた実の存在の両親をこの手でこの世から葬るなんて、それが必ずしも正しいことなんて限ら

ない!私だって家族で楽しく幸せに暮らしたかった!小さな頃はそれが当たり前だと思って、一生その幸せと共に人生を送ることが出来る思ってた、

だけど、その幸せを私から奪ったのは・・・かつて私に幸せを与えてきた両親。最も信頼してた人に裏切られて、それでも命だけは勘弁してやろうなん

て・・・そんな甘ったれたことは出来ない!大体ロニーはまだ両親の事を根に持ってるの?悔しくないの・・・?自分を捨て、幸せも、感謝の気持ちも全

て奪った両親がまだ恋しいとでも思ってるの?そんなこと・・・考えながらレアメンバーとして行動してたの?そんな甘ったれた考えでレアメンバーを名

乗るなんてふざけないでよ!!!」

ネロが本気で怒るなんて今まで考えもしなかった。それも、相手がロニーとは・・・。

「ふざけないでよ!!!」と叫ぶと同時に、爪を立てた右手で叩いたロニーの左頬には長い切れた跡が3つ残っていた。ロニーは何も言わず、涙をこら

えてじっと座りつくしていた。

ネロはズボンのポケットからある写真を取り出し、ロニーに握らせる。

「それ、ロニーとレートの両親。中学校にきてあなたたち二人のこと聞きに来てたらしいよ。いい親じゃない。」

ロニーはその写真を見ることなく、強く握り締め、歯を食いしばり、更に必死に涙をこらえる。

「ロニー、レート、実はあなたたちに隠してたことがあるの。話したらきっと復讐心だって消えちゃうだろうと思って。もしかしたら、それだけじゃ済まなくて

、両親の元へ帰っちゃったりなんて考えてたら・・・言い出せなくて。でも、もう隠し事はしない。あなたたち2人を捨てた両親は、今でも時々施設に様子

を聞きに来てる。その写真は、2週間前に面会に来たときの2人よ。あたしその時こっそり聞いちゃったの。来月引き取りに来るって。あなたたち2人を捨

てたのは、育てる金が無かったから。両親との間に生まれたあなたたち2人の弟、妹も2人の帰りを待ってるって。施設の人がなんでまた子供を生ん

だの?って聞いたら「ロニーとレートへのプレゼントです。あの子達はずっと小さい頃から弟が欲しいって。小さい頃に見せた大家族のビデオがきっか

けでしょうね。」って答えたの。もうわかるでしょ?要するに、あなたたちは捨てられたんじゃないの。まぁ私から言わせれば、レートがやろうとしてること

は単なるわがままって事ね。」

そう言ってネロは俺の手に写真を握らせて話を続ける。

「でもだからと言って今から作戦を中止させる訳には行かない。あたしたちをここまで本気にさせたからにはリーダーとして、責任を持ってこの作戦の

指揮を取ってもらう。それぐらいは当然よね。」

「あぁ・・・やってやる。」

そんな会話をしているうちにトランの元へ車は到着した。

にも拘らず、トランは中々車に乗ってこない。外から2人の声が聞こえることから、何やらウィラと話しているようだ。しかしこのままここに留まっている

のはまずい。俺は立ち上がり、運転席側の壁を叩き、急いで秘密基地に向かうよう指示する。

俺の指示を聞いて状況を把握したのか、トランが急ぎ気味に乗り込んできた。何やら聞かれたくないことを聞かれてしまったような気もするが、ともかく

今日の正念場はこれからだ。トランク内のメンバーに気合を入れるよう伝え、そのまま秘密基地に着くまでの時間を静かに過す。

少々予定の時間より遅れて、俺等は秘密基地に戻る。基地の中心部では任務を終えたメンバーがUNOをやりながら俺等を待っていた。

「悪い悪い、今日はちょっと多忙でな。」

言い訳絡みに簡潔に事情を説明し、これから行う任務を再確認する。

レジスタンス・アンダーグラウンド3日目

レート・ローレンス(Rate-Lawrence)
コードネーム:リポ
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

ロニー・ローレンス(Lony-Lawrence)
コードネーム:パテ
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

アンジェル・アルゴン(Anjuel-Argon)
コードネーム:コラ
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

セレン・アクセ(Celen-Axe)
コードネーム:ミネ
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

ネロ・クリプトン(Nero-Krypton)
コードネーム:サド
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

トラン・ロジ(Tran-Rhodi)
コードネーム:メル
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

ダイス・ジスプロス(Dice-Gispros)
コードネーム:ミス
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

ウィラ・テルリド(Vila-Telluride)
コードネーム:オペ
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

ラド・テルリド(Lado-Telluride)
コードネーム:リン
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

ダーム・テラス(Dame-Terrace)
コードネーム:ビス
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

エリル・タングステン(Elille-Tungsten)
コードネーム:コン
担当:実家へ向かい自動車に2部の細工、装置の設置、ロードサービスに扮装し犠牲者の誘導

これから行う任務は再び実家へ向かう。ただし、自分の家ではなくそれぞれが別の家に向かって任務を行う。

任務を行うにはロードサービスの依頼が来ないことには始められない。それまでは各自ここで待機する。

電話の転送装置の電源を入れ、電話が来るまでその場で待つ退屈な時間だ。

「じゃあ、時間を有効に使うためにもUNOでもやりながら待つと致しましょうか。」

相変わらず陽気なダームはそう言ってUNOの箱をあけみんなにカードを配り始める。

「勿論賭けありだろ?富豪ルールで初めは100。倍率は2倍でな。」

「賭け無しでやるUNOなんてそれこそ時間の無駄さ。んじゃ、やるか。」

先方をジャンケンで決め、アンジェルから時計回りでゲームは開始される。UNOと言えば俺とダームが組めば怖いものは無い。俺は早速しかめっ面

を見せるアンジェルに攻撃を仕向けるように手で合図する。

ダームが「ふぁぁぁぁぁあああ・・・」と欠伸をするのは承諾した合図。

そうして俺等2人の快進撃が始まる。

主な攻撃はダームが担当し、俺は援護を担当する。UNOで俺等2人のチームワークに勝てる者はそうそう居ない。

俺等の罠にまんまとはまってくれたアンジェルはタバコを吸い始め、更に表情を険しくする。

ここで転送装置が発動し、すぐ傍にあった電話が鳴り始める。この時一番最後にカードを出したのはラド。俺はラドに電話に出るよう指示し、ゲームを

続行させる。

その間にラドに順番が回り、ゲームは一時中断となる。2分後、ラドが電話を切り第一の目的を伝える。

この時掛かってきたのはアルゴン一家。早速現場に向かおうとしたが、ダームが先に上がったやつから順番に現場に向かうことにしようと提案し、メン

バーも異論無く受理する。

そうと決まれば、とラドは早速カードを出し、ウノコールを発する。

それに続くかのように、ロニーもウノコール。

しかしここへきてアンジェルの快進撃が始まった。

この時俺とダームは知らなかったが、アンジェルの手札にはワイルドドロー4が2枚、ワイルドが1枚あったのだ。このままではまずいと、俺等2人も力を

合わせ最終手段に出る。俺からアンジェルへ向けて、ダームからアンジェルへ向けてリバースカードを出し続ける。

これでもか、という位に俺等のチームワークは発揮される。

しかし、ここでまさかのロニーが一番上がり。

早速ロニーはロードサービスの服に着替え、現場へ急行する。それと同時に、再びロードサービスの依頼が鳴る。

この時最後にカードを出したアンジェルが電話を受け取る。この時ロードサービスを依頼したのはテルリド一家。流石にエンジンルームから火が出て

いるとなると落ち着いても居られなかったようだ。

アンジェルは「急いで現場にスタッフを向かわせます」と伝え、即座にゲームを開始させると同時に、ウノコールを発した。それに続き、ラドが上がる。

アンジェルは更に強くしかめっ面を見せ、2本目のタバコに火をつける。

そして次の瞬間、奴は1枚カードを引くかと思うと、しかめっ面を崩して上がった。

その場に居たラドに「俺も行くからちょっと待ってろ」と言い聞かせ、素早く着替え始める。

そんな2人を尻目に、再びゲームは続行され、ここからゲームは急展開を迎え始める。

・・・結局ゲームは俺とダームのボロ負けで終わった。しかし、本来ならこの時点で全員が任務へと向かっているはずなのだが、全員は愚か半数に近

いメンバーがまだ秘密基地で待機している。

時刻を確認してみると午前8時過ぎ。夫婦で生活している者ならわかるが、子持ちである家庭から連絡が届かないとは・・・平日に子供を学校へ送って

いるはずなのに・・・考えられる原因の一つとしては発火装置の不良も上げられるが、俺等が仕掛けた実家から連絡が来ていないのはあまりにもおか

しい。

嫌な予感を感じるが、しばらくは秘密基地で安静に待機するのがいいだろう。と、ここでエリルが沈黙を破る。

「もしかしたら・・・もしかしたらだけど、何人かはもう感付いてるんじゃない?」

その言葉に、秘密基地に居た俺を含む全員がエリルの方を向く。そして、エリルはそのまま続ける。

「確かさ・・・私達が何か変な行動を起こしたりしたら施設の方から保護者に連絡が届くよね。もう私達彼是3日も施設に帰ってないから、もしかしたらそ

れで施設の人たちが保護者に連絡して・・・これは悪魔でも予測だけど、確かネロの親って車好きだったよね?もしかすると・・・サイドブレーキで既に

怪しいって思って他の人たちに連絡したのかも。」

俺はエリルの説明に頭を掲げ、今朝の状況をよく思い出す。

確かあの時は・・・サイドブレーキの機能を解除させる装置を装着する為に4人で力を合わせて引っ張ってるところをウィラに止められて、あっさり装置

を装着することが出来て・・・トランを迎えに行って・・・。

「あっ!そういえばあの装置を取り付けた後って確か・・・。」

「そう、あの「グガガガガガッ」って鳴るはずの音が鳴らなくなるでしょ?多分それで感付いたんだよ。相当な車好きなら何かあればボンネットを開けてエ

ンジンルームを確かめる事だって有り得なくも無い。」

言われてみれば確かにそうだ。親からして見れば、車が壊れたように見せかける細工をするのは実の息子ネロ、それか俺等以外には考えられない。

施設に居る俺等11人のことを、それぞれの親は殆ど知っている。顔から性格まで。

沈黙する基地内。そんな中、トランが一つ提案をする。

「思ったんだけどさ。みんな実家の住所とか車、電話番号は覚えてるだろ?なら電話が来るまで待たなくても僕等の方から勝手に行けばいいんだよ。

もし頼んでないから結構だ。とか言われても、電話を貰ったからきてるんだとか言って、発火装置を作動させてサイドブレーキが機能しないことを目の

前で実践すれば疑いようも無い。実際に壊れてるわけだし、断る理由も無いだろ?」

トランが考えたとはとても思えないくらいに巧妙な作戦に皆が同意し、早速メンバーはロードサービスの服に着替え、向かう先を議論して全員決まった

ところでそれぞれ目的地へと向かう。

俺とロニーが向かうのはダームの実家、テラス家。そこは予想以上に大きな家で、とても生活費に苦労しているような気配は感じられないくらいのもの

だった。俺等2人はその大きな一軒家を前にし、開いた口が塞がらなくなる。

ともかく今一度サイドブレーキを確認し、クロロホルムをエアダクト付近に垂らし、エアコンに流れるようにしておく。準備が整ったところで、ロニーはテ

ラス家のインターホンを鳴らす。

呼び出し音が鳴り間もなくテラス夫婦はやってきた。「毎度ありがとうございます、サマリロロードサービスの者です。」と、適当な挨拶をするも返ってく

る返事は予想通りだ。

「あの・・・何か御用でしょうか?」

「お客様から車の点検の依頼があったのですが・・・身に覚え御座いませんか?」

と、適当に会話を進めながら車の症状を伝えると、彼等は不安げな表情を上げて素直に車まで案内する。

「こちらですね。ではエンジンルームを一回り確認させてもらいますので、エンジンをかけてもらえますでしょうか。」

こちらの要望に一切疑いを持たず、夫は何のためらいもなくイグニッションキーを回す。

そしてエアクリーナーが空気を吸い込んでいる音を確認し、ロニーに指で合図を送り、俺等は適当に点検をしている振りを続ける。

しばらく演技染みた行動を続けているうちに、熟睡している2人の寝顔を確認し、試しに耳を抓んでみるが起きる様子は全く無かった。俺は運転席側の

ドアを開け、エンジンを停止させてボンネットを閉める。その間にロニーはウィラへ連絡し、こちらへ人質をを引き取りに向かうよう伝え、その場で一息

つく。

身体に染み付いたクロロホルムを少しでも逃がしてやろうと、ドアを全て開けた状態のまま放置し、その場で待つこと約20分。妙に時間がかかったかと

思うと、驚くことに俺等以外のメンバー殆どが任務を終え、それそれ人質をトランクに乗せて現れた。

小太りなテラス婦人を運ぶのは中々辛い。他のメンバーに手伝ってもらい、腕がもげ落ちるくらいの覚悟で思いっきり腕に力を込め、トランクに乗せる

一旦トランク内に乗せられている人質の数を確認すると、レアメンバーの倍に近い人数だった。流石にこれだけ居ると車のほうが心配になってくるが、

あまり優著なことは言っていられない。即座にメンバーをトランクの中に移らせ、改めて合計人数を確認し、ウィラにトランクのドアを閉めるよう指示す

る。

「ロニー、レート、覚悟は出来た?」と真剣な目でネロが俺等に尋ねる。俺は作り笑いを見せ「俺が応える必要なんかどこにある。」と呟く。

一方ロニーはと言うと「勿論。もう逃げないよ。」と、いつに無く元気な様子でそう答えた。

一瞬俺を含めネロや他のメンバーは驚きの表情を浮かべたが、ネロは即座に微笑み「そう、安心した。」と言ってロニーに笑いかける。

その間も車は秘密基地に向かって走り続ける。その間、トランクに乗っていたメンバーは一度仮眠を取り、本番に向けて体力を回復させる。その間約

10分。

ある程度走ったところで車はがたがたしている路面に突入する。この路面が秘密基地まで残り少ないことを伝える。車の激しい振動にメンバーは目を

覚まし、「ん〜っ」と背伸びをする。

車の振動が弱まり、後進を合図する電子音がトランク内に鳴り響き、メンバー全員が立ち上がる。車が止まり、エンジンが止まるのを確認しウィラがト

ランクのドアを開けるのを待つ。

しかし何故かしばらく経っても出てこないウィラ。試しに俺がドアを叩くと、彼女の微かな声が聞こえてくる。

あまり詳しくは聞き取れなかったが「あたしとしたことが・・・自分の車までサイドブレーキ無効にしてどうすんのよ・・・。」と、何とも頼りない台詞が聞こ

えてきた。

しばらくして、ようやく運転席のドアが閉まる音が聞こえる。そしてこちらへ向かってくる足音と共に、トランクのドアが開く。それに合わせ一斉に人質を

抱えたメンバーが降り出し、人質を秘密基地内部へと運ぶ。

中には小さい幼稚園性と思われる子供も居たが、物は序と、同様に連れ運ぶ。

何人か運ぶのに苦労する大人が居たが、男性陣で力を合わせてなんとか全員連れてくることに成功した。

人質の両手をガムテープで固定し、足をロープできつく縛った状態でその場に放置する。

あとは人質が目を覚ますまでの間、時間を潰して待つだけ。俺等は人質の居る場所からすぐ近くにある中心部に再び集まり、UNOを始める。

俺とダームの復讐劇で1回目は思いの外早く終わり、早速2ゲーム目を始めようとしたそのとき、後ろのほうからガタガタッと物音が聞こえてくる。更に

微かだが女の声も聞こえてくる。

ゲームは一時中断とし、トランが人質の様子を見に行くと1人の女性が目を覚ましていた。しかし、トランが近付くに連れ、女は段短と大人しくなってゆ

く。

トランはその女に一言「静かにするように」と伝えて、中心部へ戻ってくる。

そして、ゲームは再開されるかのように思えたが、まるで俺等の邪魔をするかのように一人の女性が叫びだす。若干苛立ちを感じながら女の悲鳴の

元へ様子を見に向かうと、その場に横になって眠っている犠牲者となる者達を必死に呼び起こそうとする女性。

俺が身をもって女にその場で罰を下そうとするが、エリルがその女性に向かって何やら話し始めた。

「お母さん、私からのプレゼントだよ。そこに居るクズ共が全員起きたらプレゼントをあげるから静かに大人しく待ってな。時間まで待てないような我侭

な奴は撃つよ。」と、片手に拳銃を構えて自分の親に警告を発する。

そして、そのままゲームは続く。

開始から30分が経過し、犠牲者の殆どは目を覚ましていたが、未だにぐっすりと熟睡している者が2人居る。鼾は五月蝿く、寝相は想像も付かないくら

いに酷く、もはや同じ犠牲者にも見捨てられそうなくらいだった。

いい加減起こしてやろうかと思ったが、最後くらいゆっくり眠らせてやろうとそのまま熟睡させ、UNOを一旦止めてトランプのブラックジャックに変更し

ゲームを再開させようとしたその時、熟睡していた2人がようやく目を覚ました。

目を覚ました2人は勿論その場の状況を飲み込めるわけも無く、慌てふためき、その場に居た顔見知りである他の親に状況を尋ねる。そして耳にした

驚くべき情報に身を固め、こちらを向き「どういうつもりだ!」と罵声を上げる。

するとエリルは威嚇するかのように炭酸の缶ジュース目掛け発砲する。勿論その銃声を聞いた途端に犠牲者は全員身を引き、大人しくその場に座り

込む。

そして次はウィラが立ち上がり、自分の母親であるサミーという女の顎を撫で上げるように人差し指でグイッと持ち上げて「プレゼントだよ。」と言い聞か

せ、顎から手を離し右手で頭を壁に押し付け「ショータイムの始まりだ。」と告げ、犠牲者全員を例の会場へと向かわせる。

「こちらへどうぞ。」と、ダームの指示に従い、人数分用意されていた椅子にそれぞれ腰をかけ、じっとしたままコソコソと話し始める。

カチッという音と共に電気が全て消え、辺りは真っ暗になり犠牲者は全員ビクッと辺り一面を見回し「なんだこれは!」と怒りの声を上げる。しかし真っ

暗な状況では身動きすら取れないのは本人たちも把握しているだろう。

そのままダームを少し離れたスポットライトの場所へ向かわせ、俺とウィラがショーの司会進行役として前に出る。そして俺の合図でダームはスポット

ライトのスイッチを弾き音を響かせる。

スポットライトに映し出された俺等の姿を見て犠牲者たちは驚きの様子を隠せそうに無かった。当然妹や弟に当たる者は俺等の姿を見ても恐怖心し

か浮かばない。

「大変長らくお待たせいたしました。これより私達レジスタンス・アンダーグラウンドからのプレゼントを発表します。」

ふざけた司会の言葉に犠牲者たちは立ち上がり、こちらへ向かって力ずくで反応しようとする。が、その場に居合わせたダイスの発砲した弾がこちら

へ向かってくる男性の肩を打ち抜いた。

「うがぁぁぁぁぁあああ!!」

当然男性はその場に転げ、肩を抑えて苦しそうな声を上げる。

「おっさん、折角のショーを邪魔しちゃあいけないな。命欲しくば大人しく戻りな。今度はダイスが頭を貫くよ。」

男性は彼女の構える拳銃と、その場に居たダイスの身を確認すると大人しく席に着く。

「では、ショーを続けます。今日のプレゼントは、あなた方にとって最も身に覚えがあるはずの人物です。我がレアメンバーのレート、ロニー、ラド、トラ

ン、ダーム、エリル、ネロ、セレン、アンジェル、ダイスです。」

次々と現れる息子たちの姿に親は表情を曇らせる。

「それでは今日のメイン、パニッシュに移らせてもらいます。まずはあなた方の中で、この企画に参加したいと思う人は居ませんか?居なければ我々

から選ばせていただきます。」

彼女は観客を一通り見回すが、パニッシュがどういったものなのか知らない彼等の中に挙手するものは当然居ない。

と、ここでセレンが「ではそちらの小太り気味な男性の方、こちらへどうぞ。」と、ダームの父親を指す。

しかし当然、ダームの父親は大人しくこちらへ向かってくるはずも無く、その場から一切動こうとせずただじっと座っているばかりであった。

このままでは埒が厭かないと判断したのか、セレン後ろから銃を突きつけ「あまり皆を困らせないで欲しいなぁ。僕だってさ、ここで銃の引き金を引きた

いって訳じゃないんだよ。」

何故かこちらまで背筋がゾクッとする程の恐ろしい文句に、ダームの父親は等々観念して大人しくこちらへと向かってくる。

ダームの父親が席に着いた瞬間、ラドは椅子に身体をガムテープで縛りつける。その間に、ウィラが進行させる。

「ご協力ありがとう御座います。貴方のお名前は?」

「ラム・テラスです。」

「はい、ではラムさん。貴方に一つお伺いしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」

ウィラがそう尋ねると、ラムは突然口を閉じてしまった。そろそろ苛立ちを感じ始めたウィラは、ラムの爪先目を掛け発砲する。

「ひっ!・・・・っく、あぁぁぁぁぁぁ!」

「ラムさん、貴方には実の息子が居ましたよね?名前はダーム。貴方の住んでいる家は確か・・・大きな一軒家。とても生活費に苦しめられていたよう

には思えないのですが、彼を捨てたのには別の理由があったんですか?」

ラムにそう尋ねると、大人しく全てを告白する。

「実は、当時ダームを捨てたときは軽い気持ちでした。全て打ち明けます、私にはもう一人愛人が居ました。今でもちょくちょく・・・なんか・・・付き合いと

言うか・・・その」「はーいそこまで。ではここで、最も信頼していた人物である親に捨てられてしまった可愛そうな息子さんに聞いてみましょう。今の発

言、どう受け止めますか?」

ウィラが向けるマイクに、ダームは一切言葉を発さず、何時もの笑顔でダームは父親に近付き、構えていた拳銃の銃口を心臓に押し付けて質問する

「今まで僕を引き取りに行こうと思ったことは何回?」

そう聞くとラムは声を震わせながら答えた。「な・・・何回もあり、あありました。」

その答えを聞いたダームはゆっくりと銃口を放し、自信の母親である妻を撃ち殺した。その瞬間に妻の脳味噌があらゆる場所へと飛び散り、犠牲者は

臭い悲鳴を上げるが、ウィラが放つ威嚇の発砲を聴いた瞬間にその場は静まる。

そしてダームはラムの額に銃口を押し付けて、再び質問する。

「今まで僕を引き取りに施設へ行こうと思ったことは?」

何時もの陽気な微笑みとは訳が違う。恐怖心を煽るようなその微笑に、ラムは怯えながらも必死に答える。

「だか、だから・・・何回もかか、考えていいま・・・した!」

「おいクズ。あんたが言ったこともう一度よくその異臭放つ脳味噌で考えてみろ。何回も引き取りに行こうとしたならなんで止めるんだよ。行けなかった

理由があるのか?それとも行こうとしなかったのか?餓鬼だと思って舐めた口叩くんじゃねえ。」

今まで見た中でも最高レベルの怒りを感じさせるオーラを放ちながら、ダームは更にラムに近付く。

「それは・・・行けなかったのは・・・・・そう、妻が反対して、それ」「ざけんじゃねえ糞野郎が!!!!!!」

大きな罵声と共にその場に銃声が木霊し、ラムは命を引き取った。

死体を支える椅子をロニーが撤去し、新しい椅子を用意する。そして毎度の如く、ウィラの司会が始まる。

「ご説明が遅れました、このプログラムは息子を納得させることである景品を受け取ることが出来ます。即ち、生きる権利です。もしも息子から怒りを

買うような言い訳をしたりすると、先ほどのテラス婦人のようになってしまいます。皆さん景品獲得に向けて頑張ってくださいね!では、次の挑戦者!

居ませんか?」

風の音一つ聞こえてこない静かな空間。無理もないだろう、既に2人が実の息子に撃ち殺されている。

そんな中、メンバー最年少のセレンが自ら立ち上がり実の親に手を差し伸べ「嘘はつかない。納得いく説明をしてくれれば開放する。」とポーカーフェ

イスで囁く。

しかしセレンの親は一向にその場から動こうとせず、息子の顔を見上げ恐怖の表情を浮かべながら「いや・・・やめて・・・」と必死に訴える。

「そう・・・所詮僕はあんたにとってそんな存在価値だったんだ。」今までになく冷酷な表情でセレンは静かに親を叱る。

セレンはその場で両手を2回鳴らし「例の天井を用意して。」と、誰に対してかはわからないが命令する。

そしてセレンは母親に目隠しさせ、大人一人分のマットの上に寝かせる。

彼が行おうとしている儀式は、所謂ロシアンルーレットに近いものだ。離脱式の天井には無数の針が設置されており、どれか一つロープを切ると勢い

良く天井が母親目掛け落ちてくるというものだ。

ロープは11本あり、10本はダミー。勿論メンバーもどれが本物なのかは知らない。セレンがそれぞれに1本づつロープを配り、しっかりと握らせる。

「質問します。僕を捨てた本当の理由は?」右手には裁ちばさみを持ち、静かに尋ねる。

「っ・・・ひ・・・いぃぃ・・・・・・っいぃぃ」「ひーじゃねえんだよ。」その場にしゃがみこみ、裁ちばさみで歯を「コツン・・・コツン・・・」と叩く。その度、身体が痙攣す

るかのようにビクッビクッと反応する。

そしてセレンは1本のロープを切る。

チョキン・・・という音を聞いた途端に「んぎいいぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!」と悲鳴を上げる母親。それを見たセレンはティッシュを何枚も包め、母親の口

をグッと開き、思いっきり詰め込む。

しかし、詰め込むと同時にまた篭った悲鳴が聞こえてくる。そんな姿をセレンはその場で眺め続けた。

叫び続けること1分。ようやく収まったようだ。額には大量の汗。そして目隠しを通り抜けて流れてくる涙。

再びセレンは母親に問いかける。

「僕は誓うよ。嘘をつかないって。本当のことを話せばいいんだよ、それで帰れるんだから。」

彼の表情にはもはや殺害の念しか見えない。と、今度の母親は素直に供述を始めた。

「す・・・てたのは、実を言うとあなたは・・・わたし・・・の本当の息子じゃないの・・・。」

その言葉を聞いた瞬間、セレンだけでなくレアメンバー全員が驚きの表情を浮かべる。そして、母親は更に供述を続ける。

「貴方のお父さんは・・・女遊びが趣味のような人だったの・・・。だからね・・・そんな人の下に生まれたなんて私の口からはとても言えなくて・・・。」「つ

まり遊びのつもりで僕を生んだんだ。へぇー、よくわかったよ。」

セレンはそっと立ち上がり、裁ちばさみを手に構え「いらないなら産むな。」そう言って一つロープを切る。しかし、切ったロープはダミーであり、まだ9本

残っている。

しかしセレンは次々とロープを切り落としていく。母親の方は既に恐怖のあまりに声も出ず、ただ歯を食いしばって泣いていた。

ロープを切り続けること8本目。なんと最後の1本まで残ってしまった。そして躊躇いもなく最後の1本を切るかと思うと、一旦鋏を置き、母親に一言別れ

の言葉を告げる。

「今度生まれてくるときはまともな親の下に生まれられたらいいね。」「・・・あ・・・あいし」グシャッ

セレンは母親の最後の言葉を遮るかのように最後のロープを切った。

肉片は無残に散らばり、とてつもない異臭が部屋中に漂う。そんな中、休む間もなくウィラが次の犠牲者を呼び出す。

「うわ・・・酷い臭い。やっぱり塩酸塗るのは止めておいたほうが良かったかな・・・。」

人を殺した後に言うような言葉とは思えないほど軽い言い回しで、セレンは早足気味にその場を去った。一方、すぐさまウィラが次の犠牲者を呼び出

す。

「時間が無いんでさっさと進めますよ。次はロジ婦人で。」

まるで他人事のようにあっさりと指名する。しかし、トラン本人も他人事のような軽い気持ちでいるのか、スタスタと両親の元へ歩み寄り、父親の喉に小

型のマシンガンを押し付け、その場で質問する。

「これは論理学としては有名な問題だ。もし答えられたら開放してあげる。ただし、答えていいのは一人1回。つまり、あんたら2人で2回の回答権があ

る。勿論不正解だったら速攻殺す。」

両親を見下すトランの表情に必死に耐えようと、強がった表情を浮かべながら父親はトランを挑発する。

「へっ、お前に実の親を殺すことなんか出来るか。お前は所詮強がっておわ・・・あg・・・っがあああああ!!」

突然と叫び上げる父親の足元からは大量の血液。そして彼の右足には発射式のナイフが刺さっていた。良く見ると彼の左手には発射した後の空にな

ったケースのような物が握られていた。そして尚、トランは続ける。

「今僕が考えてることを当ててください。制限時間は2分。」

あまりに唐突な出題に、2人は必死に頭を振り絞っている。両腕に巻かれていたデジタル時計は既にタイムリミットを刻んでいた。その様子を見せ付け

るかのように、トランは机に手を置き、それぞれの表情を覗き込むように伺う。

そんな中、トランの母親が挙手する。

「整った?」

「えぇ・・・あなたは、もう一度幸せな家庭を」バババババババババ・・・

無残にもトランは最後まで答えを聞くことなくマシンガンを心臓より少し引き離し引き金を引いた。激しく鳴り響いた銃声に辺りは更に静けさを増し、呼

吸の音さえ聞こえてくる。

タイムリミットは残り12秒。もう後がないと思ったのか、父親が述べる。

「わかった。お前は俺を殺そうとしている。」

「正解。よくわかったね。レート、その屑をさっさと出口まで連れてってやって。」

一瞬答えた本人もさえ唖然とする。初の生還者が現れた。

まさか本当に犠牲者の中から生還者が現れてしまうとは。あまりに急な出来事に少々不審を抱きたくなるが、ルールはルールだ。トランの父親を出口

まで案内する。

「いかねーのか?そんなにここが好きなら一生出れないようにしてやるよ。」

「わか、わかった、すぐ行くからま、待ってくれ。」

突然すぎる言葉に動揺を隠せない父親はすんなりと俺の言葉に従う。しかしその時、トランが

「レート、例のエレベーターで送ってやって。黄色で。」

そう言って指で俺に合図をする。

俺はその手信号をしっかりと読み取り、トランの父親を例のエレベーターへと案内する。

彼は少々俺のことを疑っていたようだが、銃口を押し付ければすぐに大人しくなるので別の問題は無かった。後は例のエレベーターまで誘導すること

が出来ればこの仕事は終わりだ。

会場から歩いて間もなく、その場所に辿り着いた。そして扉を開け、トランの父親をエレベーターに押し込め、素早くドアを閉め鍵を閉める。当然閉じ込

められた本人は即座に叫びだし、ドアを叩いて必死に暴言を叩く。

そして、俺は元の会場へ戻りテレビの電源をつける。

テレビに映し出された映像の中には、例のエレベーターに閉じ込められたトランの父親が映っていた。

このエレベーターには彼流の仕掛けが施されている。勿論生きたまま地上に返すつもりなど更々なかったのだ。

エレベータの壁一面にはそれぞれ一つ切れ目のようなものが入っている。が、余程注意してみないことにはその存在に気付くこともない。

トランの父親は開放感から全身脱力したのか、その場にぺたりと座り込んでいた。このまま家に帰れると言う安心感からか、彼の表情には力尽きた微

笑が浮かんでいた。おめでたいものだ。

トランはそのテレビを見つめ、何も言わず手に持っていたボタンを押す。

その瞬間、エレベーターの中に大きな警報音が鳴り響く。天井についていた警報ランプが黄色い光を強く放ち、精神的に彼を崩壊させる。

恐怖心はやがて怒りへと変貌し、自ら命を絶つ勢いで目の前のドアにタックルする。

トランはその必死な姿を見て甲高い笑い声を上げる。彼にあのドアを壊すことは出来ないと確信を持っていたのだ。コンクリートで埋め尽くされた壁を

壊せるのは砲丸投げ選手くらいだろうと、軽い気持ちで眺めていた。その姿に取り残された犠牲者は怯え、更に恐怖心を掻き立てられる。

威勢の良い罵声と共に響き渡る激突音はトランにとって快感だったのだろう。もはや命を引き取るのも時間の問題だと。

しかし・・・。

コンクリートが崩れるような音と共に、トランの表情からは一切の微笑みが消えた。

トランの表情から嫌な予感を感じ取ったレアメンバーは即座にモニターの見える場所に移動し、エレベーター内の監視カメラに奴の姿が映っていない

ことを確認し、すぐ傍に置いてあった銃を構えて彼の元を追いかける。

「はああああああああぁぁっははははは!!!残念だったなトラン!!!!」

まるで怒りを買うような捨て台詞を吐き、全速力で秘密基地の出口へと向う。その姿を追いかけるトラン、更にと欄の姿を追いかけるレアメンバー10人

。現場は騒然とした雰囲気に発ちこまれ、余裕綽々だった現場の空気は一気に逆転し、トランの怒りはもはや頂点へと達していた。

「ぶっ殺すぞ糞じじいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

普段のトランからは想像もできないくらい殺気の篭った罵声に俺達は一瞬凍りつく。トランは本気で父親を殺害することしか考えていないだろう。

咄嗟の逃走劇が始まって間もなく、トランの父親は出口へと辿り着いた。そして、ドアノブを回し押し開けようとする。

が・・・。

目の前に停めてあったトラックがドアを塞ぎ、トランの父親は今度こそ本当の意味でその場に閉じ込められた。

間もなくトランは父親の元へと辿り着き、銃を構える。だが、決して引き金を引こうとはしなかった。そして父親もその場から一切動こうとはしなかった。

すぐさまその場にレアメンバー10人が辿り着き、もはや父親は笑うことしかできなかった。その場に居た俺等は父親に対し少し不審を抱く。

しばらくその場で鬱陶しい笑い声を上げている父親に静まりかけていた怒りが再びこみ上げてきたのか、父親の足元を狙い複数打ち込む。その瞬間

、靴に血が滲み父親はその場に倒れこみ、つま先を押さえながら悶える。

更にトランは無言のまま父親の左肩を狙い撃ち、そっち父親の元へ近付いて右足で勢い良く蹴る。

「ぐぅぅ・・・・・・っい・・・。」

父親の苦しむ姿にトランは一切反応せず、俺等の元へ足を運び、ロニーに持っていた銃を渡す。

「ちょ・・・トラン?」

何を始めるのかと思い思わず声をかけるネロ。しかしやはりこちらの声にも一切反応せずそのまま父親の元へと歩み寄り、父親の胸倉を掴み上げる

「立てよおっさん。」

睨みつけるかのような表情でトランは父親を挑発する。無論父親は抵抗できるはずも無く、トランの命令に従い無事だった右足で必死に力を振り絞り

立ち上がる。

「木面の壁に寄りかかれ。」

何をするつもりなのか。木面の壁に立たせるのには何か意味があるのだろうか。トランは一切目的を打ち明けず静かにその現場を去った。取り残され

た俺等10人とトランの父親。水滴が零れ落ちる音が聞こえるほどに静かな空間の中、決して彼は身動きを取ろうとはしなかった。むしろ取れなかった。

しばらくしてトランはあるものを手に持ち現場へ戻ってきた。トランの手元には大きな袋と見た目からして凡そ1キロほどの金槌。トランは父親の目の前

に立ち、ゆっくりと大きな袋を下ろし中から比較的大きな釘を1本取り出す。

「っひ・・・ひぃぃぃぃ!!!」

1キロほどの金槌と大きな釘。もうこれから自分の身に起こることは殆ど予想できるだろう。そしてトランはその予想を現実のものにすべく、大きな釘を

手のひらにグッサリと差し込む。彼の悲鳴と骨を貫通するかのような音がその場に木霊し、トランの顔が若干赤く染められる。

続けてもう片方の手のひらにも同じように釘を刺し、極め着けに足元にあった金槌で手のひらの釘目掛け大きく振りかざす。

ブンッ・・・

振りかざす際の風の音、そしてごと手のひらを打ち付ける大きな音。父親はこれまでに無いほどの大きな悲鳴を上げ、大量の涙を見せる。泣き崩れ

た赤ん坊のようなその表情をトランはじっくりと鑑賞し、父親の涙を指でそっと拭う。

「痛い・・・?」

トランは深く哀れみの表情を浮かべながら父親に囁く。父親はもはや喋る気力も残っておらず、只管息を荒くして泣き崩れるだけだった。

「痛いかっつってんだろ!?」

自分の質問に一切答えようとしない父親の態度に更に怒りがこみ上げたのか、今度は逆の手の手首を目掛け、思いっきり金槌を振りかざす。

もはや父親は大量出血によって死を迎えようとしている。このまま殴りつけるだけでは面白くないと踏んだのか、ロニーから銃を受け取り、足元から徐

々に上を狙って撃ちつけてゆく。マシンガンの威力は絶大なもので、撃ち続けるうちに彼の胴体から下半身が千切れ落ちる。

「新しいものが生まれるためにはな、古いものが犠牲になるんだよ。」

トランは酷い姿となり息を引き取った父親に向って一言残し、現場を去った。

こうして俺等11人は再び会場へと戻り、ゲームは再開された。



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